ゴールを重ねていく湘南。三点目から四点目の間、もうずっと泣いていた。Ｊ１の舞台で難敵を相手に逞しくも伸びやかにスタイルを体現するチームには、何も出来なかった前節の影はもう欠片も見えなかった。
いろんな試合前後のコメントを観るにつけ、短い期間でチームの方向性を再確認して『精神的調整』をキチンとやってきてくれたようで嬉しい限り。顔つきから違うように見えたし、試合開始直後からピッチからビシビシ伝わってくるモノがあった。
陣形はあくまで高くコンパクトに。選手間の距離を適度に維持しながら相手のスペースを駆け上がる。前線からプレッシャーをかけ続け、こぼれ球からショートカウンター。今季これまで渇望しつつもなかなか観ることができなかった湘南スタイルの全てがそこにあった。
スタメンもいじってきていた。バイーアさんの怪我＋セットプレー対策ということで、最終ラインがワタル／ツボさん／島村という並びに。こういう時に頼れるのはベテランの経験よね。安定感のバイーアさんも捨てがたいので、次節以降の組み合わせがどうなるのか今から楽しみだ。
この試合、まずは先制できたことが大きかった。決死の覚悟で臨んだとはいえ、自分達の時間帯で得点できないままでいたら、再び負のスパイラルに飲み込まれてしまったかもしれない。
先制点は中央の永木からのパスが右サイド奥に走りこむ星矢に綺麗に通ったところから、間髪入れずに入った鋭いクロスを高山が頭で合わせ、ＧＫが弾いたこぼれ球を大槻が押し込んだもの。開始１０分で生まれたゴールは、苦しむチームへの何よりのカンフル剤になったはずだ。
二点目は同点で迎えた後半１９分、鳥栖ゴール前での混戦から。大槻がヒールで落としたボールを高山が拾い、足技でタイミングを外し、ズラし、相手ＤＦのわずかな隙間からゴール右隅に流し込んだ技アリのシュート。高山の待望の湘南復帰後初ゴールで、さらに湘南が加速する。
そのわずか５分後の三点目。大竹からの正確なコーナーキックを、ゾーンで守る鳥栖ＤＦからノーマークだった島村が余裕を持って頭で合わせると、狙い通りの誰も触れないコースでゴールに吸い込まれていった。元ＦＷで今もシュート練習を欠かさないベテランの面目躍如だ。
四点目は更に７分後にやってくる。左サイドからのＦＫ、キッカーの永木とシュンスケが何やら長々と話している。２点リードしててまだ何か仕掛けるのかな～と思ったら、仕掛けてきた。
永木が横のシュンスケにはたく。中央の大竹にパスを入れると、ペナルティエリアに突進するシュンスケ。大竹はボールを一度収め、オフサイドぎりぎりでスルーパス。シュンスケがマークにつかれる前にゴール前にクロスを入れる。ＧＫが弾いたところを詰めたのは、またもや島村！
去年も何度か見せていたトリックプレー。鳥栖の守備を見てイケると判断したんだろうけれど、こういうロマン溢れるプレーが出てくるなら安心だ。もう簡単にブレたりしないだろう。
無得点での三連敗を経て、湘南スタイルを全面に出してのホーム初勝利。この勝利は２０１４年のアウェイ磐田戦のような、迷った時に立ち返ることのできる珠玉の勝利となった。相手のストロングであるセットプレーを防げずに２失点してるのは反省点だったりするけども。
リーグ戦８戦して３勝４敗１分の１２位。中位に何とかついていけている。折り返し地点の手前で自分達のスタイルを再確認できたのは幸いだ。ここから更に加速していきたいものだ。
ＧＷの連戦、すぐやってくる次節の相手はアウェイで名古屋。二年前は「立ち塞がる高くてブ厚い壁」だった相手、成長と深化を見せつけて傷跡を残したい。勝率を五割に戻して帰ってこれたら言うことなしだ。鳥栖戦の輝きがフロックでないのなら、不可能ではないはずだ！
