試合後に『映画を見ているような』と形容したのは、勝利監督の曺監督だった。少し荒削りな所もあったけれど、観客の心を動かす魂の入ったプレーがノンストップで90分続いた。それが互いのスタイルをぶつけ合うものなら、試合が熱くならないわけがない。
2ndステージ得失点まで同戦績。湘南8月唯一のホームゲーム。中村憲剛通算500戦出場。開幕戦以来のNHK-BS1生放送。そして何より神奈川ダービー、チケットはほぼ完売。舞台は完全に整った。今『NONSTOP FOOTBALL』の幕が上がる。
【起】
キックオフ直後、三竿の蹴りだしたボールが相手に直接渡ってしまい、速攻カウンター。あっという間にゴール前に運ばれ、大久保にゴールに流し込まれて川崎先制。開始1分もしない間に失点に、まずはいきなり掴みはオッケー。…いや静かな立ち上がりで良かったんだが(苦悩)。
しかしここで下を向かないのが今の湘南。選手もサポーターもすぐにギヤを上げて反撃を開始。何せまだ89分残ってる、諦めるにはまだ早い。すると11分、前線からのプレスが今度は川崎のミスを呼び、相手ゴール付近でのパスミスを藤田祥が掻っ攫ってゴールに蹴りこんだ。
【承】
早々に同点にできたことで、湘南の勢いは更に増す。しかし川崎も譲らない。プレス&ラッシュ対ポゼッションの鍔迫り合いが激しさを増していく。湘南の圧力に若干圧されたか、中盤のスペースを湘南が有利に使える時間が増え、逆転弾への機運が高まるも前半はドローで折り返し。
【転】
後半は川崎が徐々にペースを握り、流れを押し返す。鋭く力強いパスで何度も好機を演出し、湘南は攻守の切替えの速さで応戦。膠着すること無く流れ続ける試合、次の1点は…湘南だった。
自軍深くで相手のパスを引っ掛けて奪うと、そこからカウンター発動。
永木からの縦パスを受けたヤーマンが、潰されながらも追い越す永木に更に縦パス。
永木、中央に斬り込みつつ大外のコバショーの上がりを待ち、スルーパス。
(この時点で湘南の選手、ゴール前に2人、ペナ外に3人が走りこんできている。)
コバショーのセンタリングに、アリソンがノーマークでジャンピングヘッドを合わせ、ゴール。
時間は後半31分。ボールを奪ってからわずか15秒でゴールを決めたは、直前に藤田祥と交代で入ったアリソンだった。清水戦で感じた予感は正しかった。その前に交代で入っていたヤーマンと合わせ、曺監督の交代策がピタリと当たって伝家の宝刀が綺麗に決まったゴールだった。
【結】
リードされた川崎が、そこから怒涛の攻撃を見せる。すっかりラインを押し下げられながらも、湘南守備陣も必死に食い下がる。何度も鋭いシュートを打たれ、そのたびにGK秋元が文字通りの守護神となってゴールに立ちはだかった。この試合だけで何点を防いだのかわからない。
終了直前のピンチも秋元が気合いで弾き、その後のコーナーも凌ぎ切った。出会い頭のミスからの失点という逆境を跳ね除け、逆転勝利というハッピーエンドを掴み取ることができた。
拮抗した展開の中で、流れの中で失点しないで勝ち切れたのは、湘南の成長の証の一つと言えるだろう。ここまでの公式戦で1点差勝利が実に9試合、2-1勝利は6試合目。1点差ゲームをことごとく落として降格した2013年を思えば、チームの底力の向上は明らかだ。
この勝利で、2ndステージは今度は浦和と得失点まで同じで4位に並んだ。年間順位では勝ち点37のマリノス、勝ち点36で並ぶ柏/名古屋と4チームで7位を争う。11位の神戸の勝ち点が29と少々離れて、油断は禁物なれどやっと一息つけたかなという気がしている。
迎える次節はアウェイでG大阪戦。新スタジアム完成前に万博記念競技場に行ける幸せ。1stでは確かな力の差を感じたものだが、あれからの成長曲線でどれだけ近づけているか。
ACLで勝ち残っていて明日アウェイで試合がある分だけこちらに有利と言えなくもないが、日程的に有利な条件で鳥栖に完敗したこともあったし、気にするのはやめよう。まずは自分達の力を100%発揮することだけに集中だ。